自己信託SPCの利用方法 | 投資ヴィークルとしての自己信託SPC

今回は特別目的会社(“SPC”)を自己信託[1]の受託者とする自己信託SPCを投資ヴィークルに用いることを検討します。

自己信託SPC

 

1.投資ヴィークルの要件

投資ヴィークルには、主に、SPCと匿名組合を組み合わせた仕組(“GK-TKスキーム”)が用いられています。

GK-TKスキーム

GK-TKスキーム等主な投資ヴィークルには、主に、①倒産隔離[2]、②税務導管性[3]の機能が期待されますが、自己信託SPCにおいてもそれら機能は確保可能と考えられます。

倒産隔離: いわゆる「償還スキーム」に設計することで、取引関係者の破綻リスクから信託財産及び信託の仕組が影響を受けないようにすることが可能と考えられます。
税務導管性: 信託は、法人課税信託に該当する場合を除き、受益者課税のため、税務上の導管性の確保は可能と考えられます。更に、信託の受益者課税は、所得の性質の変更を伴わないため、不動産小口化商品等への利用が可能と考えられます。

 

2.自己信託SPCの制限

ただし、自己信託SPCを投資ヴィークルに用いる場合は以下の制限が生じます。

自己信託の受益権の譲渡期限
受託者が受益権の全部を固有財産で有する(単独受益者である)状態が1年間継続したときは、信託が終了する(信託法163条2号)ため、自己信託の設定後1年以内に、少なくとも受益権の一部を他者(つまり、SPC以外の者)に譲渡する必要があります。

自己信託の受益者の数の制限
自己信託の受益権を多数の者(50名以上)が取得することができる場合には、自己信託をしようとする者は、自己信託の登録を受けなければなりません(信託業法50条の2)。自己信託の登録を避けるため、受益者の数は、49名以下とする必要があります。

 

3.まとめ

これらの制限(投資ヴィークルに用いる前提より譲渡期限は問題にならないと考えられるため、特に受益者数の制限)が問題とならない案件では、自己信託SPCは投資ヴィークルの選択肢となり得ると考えられます。(ただし、有価証券を信託財産とする場合は追加の検討が必要になります。)

また、信託受益権の自己私募は、金融商品取引業に該当しないと解されるため、案件規模等を理由に第二種金融商品取引業者の協力を得られない案件では有力な選択肢と考えられます。

  • みなし有価証券の発行者である委託者自身が信託受益権の販売、取得勧誘を行うことは、「有価証券の募集又は私募」となるが、金融商品取引業には該当せず(金商法2条8項7号)、第二種金融商品取引業の登録は不要。
  • ただし、委託者又は受益者から委託を受けた第三者が信託受益権の譲渡を媒介(信託受益権の譲渡の媒介)することは、「有価証券の募集の取扱い又は私募の取扱い」又は「有価証券の売買の媒介」となり、その第三者がこれらを業として行う場合は、金融商品取引業に該当し(金商法2条8項9号・2号)、第二種金融商品取引業の登録が必要(金商法28条2項1号・2号、29条)。

 

 

[1] 自己信託とは、特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書等で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の事項を記載したものによってする方法(信託法3条3号)により行う信託をいいます。
[2] 倒産隔離 取引関係者(資産の原保有者、投資家、貸付人)の倒産から、資産流動化取引の資産や投資ヴィークル自体が影響を受けない仕組、手当。GK-TKスキームでは、主に、SPCの議決権隔離、独立第三者による管理、債権者(潜在的な債権者を含みます。)の破産申立の放棄により達成可能と考えられています。
[3] 二重課税の回避、具体的には投資ヴィークル段階での課税を回避し、投資家段階で課税されるようにすることを指します。GK-TKスキームでは、配当又は分配利益を損金に算入して投資ヴィークル段階での二重課税を回避します。